動物病院の待ち時間対策、工夫していますか?
皆さん、待ち時間は好きですか?
こんにちは、株式会社HUMOの高濱です。本日は飼い主様の満足度を下げる「待ち時間」について、どのような対策方法を取れるか考えてみます。
ちなみに私は待ち時間、嫌いです。(当然ですよね)
病院だと患者を待たせて当然という感覚を持っている方もまれにいらっしゃるのですが、そろそろその感覚は変えていく時ではないでしょうか。
1時間待つのはストレスです
先日、知り合いの動物病院の院長先生が仰いました。
「うちは待ち時間が長く、飼い主さんをイライラさせてしまうことがあるのですが、どうしたらよいでしょうか?」
これは人気の動物病院さんからはよく伺う言葉です。診察まで2時間弱待たせてしまうこともまれにあるそうで、飼い主様をイライラさせてしまい、ちょっとした問題も事が大きくなってしまうとのことでした。
1時間ほどはよくお待ちいただくことになるとのことで、それでもなお多くの飼い主様が待ちたくなる動物病院という見方もできると思いますが、院内で実際に1時間待つのはストレスを感じます。待ち時間が長いところは飼い主様の気持ちを理解するうえで試しに1時間(せめて30分)待ってみる研修を行ってもよいと思います。
飼い主様からの評判は良いに違いないと思うのですが、ただ待ち時間に関しては飼い主様からすると短いがいいに決まっています。
私が飼い主の立場で、「絶対にこの先生に診てもらいたい」という希望がない状態で2時間も待たされれば「もうここには来ないな。。」と思うはずです。
待ち時間は実際の待ち時間より「長く」感じる
「ラブロック&ウィルツのサービス・マーケティング」(リストファー・ラブロック 、ヨッヘン・ウィルツ(共著) というサービスマネジメントの本では待ち時間に関する10の原則が紹介されています。
- 無為に過ごす待ち時間はより長く感じる
- 事前・事後の待ち時間はより長く感じる
- 不安は待ち時間を長く感じさせる
- 不確定な待ち時間はより長く感じる
- 待つ理由の分からない待ち時間はより長く感じる
- 不公正さは待ち時間を長く感じさせる
- サービスの価値が高いほど、人は長く待つ
- 独りで待つ時は、待ち時間はより長く感じる
- 身体的に不快・苦痛な待ち時間はより長く感じる
- 不慣れなサービスを待つ時は、待ち時間はより長く感じる
どれも納得できるものではないでしょうか。
最初に挙げた知り合いの院長先生の場合ですと、1~2時間待ちが普通の状態になっていますが、飼い主様からするとそれ以上に「待たされている」と感じられているはずです。
当然待たされた飼い主様は一番声のかけやすい受付に文句を言いたくなります。そして受付スタッフは「病院の待ち受けシステムが整っていないから怒られた」と感じることになります。(イライラした飼い主様がいつ受付スタッフにクレームを出すかヒヤヒヤしている姿が目に浮かびます。)
もし院内が忙しすぎることが原因で医療ミスが発生したことがあるのであれば、獣医師や動物看護師は「もう少しゆとりをもって診療することで、より適切な診療が行える」と感じているかもしれません。
いずれにしろ、飼い主様を長い時間待たせることは飼い主様にとっても、病院スタッフにとってもマイナスの影響があります。
そもそもなぜ待ち時間はイライラするのか
人はいつまで待たされるのか分からないと精神的に不安を感じ、ストレスを抱えます。したがってまずは診察までのおおよその時間を受付時に伝えるか、待合室に待ち時間を表示させるか、WEBの待ち時間表示システムを使い、あとどれくらい待つのかを伝えましょう。
待ち時間が分かれば、次に行うことはその待ち時間を活用できる方法を提供することです。
人は知らない環境に放り込まれるのもストレスを感じます。皆さまにとってはいつもの空間でも、飼い主様にとってはなれない環境である点を留意しましょう。
待ち時間を短縮する方法
まずは根本的に待ち時間を短縮する方法を考えてみたいと思います。
対応可能診療数を増やすことで、待ち時間を減らす
- 1人あたりの診療時間を短縮する:診療方法の見直し、カルテの入力方法の見直し等
- 同時診療可能な患者数を増やす:スタッフの採用、診療室の増設等
ポイント
人の採用やカルテシステムの導入にはお金がかかりますが、人材派遣サービスを活用したり、毎月払いのカルテシステムを使うことでリスクを抑えた施策を行うことができます。
人材派遣に関して、今は獣医師資格を保有しているものの家庭に入っている方を予防医療担当として雇うケースが増えています。弊社でも獣医師や動物看護師さんの人材派遣サービスを行っていますので、ご興味があれば最下部のフォームよりご連絡ください。
また、最近は人医療同様にある程度の規模の動物病院さんは医療クラークを採用し、獣医師が診療に集中できる環境整備を行っているところも増えているように思います。
診療数を減らすことで、待ち時間を減らす
- 値上げする
- 予約制にする:一定時間の診療数を制限する
ポイント
診療数が多いことで院内のスタッフが疲弊しているが、人を入れることが難しい場合は値上げすることも視野に入れてはいかがでしょうか。動物病院は人医療と異なり自由診療のため、値上げも可能です。
仮に外来数が減ったとしても売り上げが変わらなければ、1診療あたりの時間を伸ばせるためスタッフに余裕ができます。値上げはお薬の値段を上げるか手術の値段を上げるか、再診料を上げるかなど慎重に検討する必要があります。
診療時間の直前に来院してもらうことで、待ち時間を減らす
- 現在の待ち状況を確認できるWEBシステムを入れる
ポイント
今や多くの方がスマホを持っていますから、スマホで
- 今何番まで診療が進んでいるのか
- 大体あとどれくらい待つのか
を確認できるようすることを私は強くお薦めしています。
今では多くの待ち状況を確認できるサービスがあり、無料から導入可能なものもあります。(待ち時間 システム 病院、などで検索するとたくさんのサービスが表示されます)
近年は弊社でホームページをリニューアルさせてもらう時には待ち時間を確認できるサービスの導入を検討する機会が増えました。不必要に病院で待つ必要がないため、飼い主様のイライラが溜まりません。
ただし、飼い主様の中にスマホをあまりお使いにならない高齢の方がいらっしゃる場合、病院での受付と平行して導入する必要があります。また、待ち時間確認システムを飼い主様が使い慣れるまでは一定時間がかかりますので、病院内やホームページ内でシステムの使い方を説明したほうが良いでしょう。
待ち時間を長く感じさせない方法
人やシステムを入れるとなると少しハードルが高いとお感じになる場合は、飼い主様に「待ち時間を長く感じさせない方法」を取り入れることも有効です。
- Wi-Fiを導入し、インターネットを自由に開けるようにする
- スマホ充電器の無料貸し出しを行う
- 一人用の椅子、机を用意し、PCやスマホをいじりながら快適に過ごせるようにする
- 最新号の雑誌を揃えておく
- マッサージ機や血圧測定器を用意する
- 飲み物やお菓子を提供する
- 近辺の動物OKのカフェと提携し、飲み物を安く提供しお待ちいただく
- 幼児用のキッズスペースを設ける
- 待ち時間が一定時間を経ったらお声かけを行う
- 近くの公園などを案内し、時間になったら呼び出しを行う
- キャットフレンドリー認定を取得するなどし、待合室の空間作りを行う
ポイント
鍵となるのは、「快適に過ごしていただく」ことです。イライラするのは待ち時間以外に、慣れない環境で知らない方と一緒に過ごさなければならないからです。
できる限りプライバシーに配慮(飼い主様同士の目線が合わない、1人の空間を維持できる等)し、快適に過ごせるように工夫しましょう。
おまけ:長い時間待たせてもある程度納得してもらう方法
志向を変えて、飼い主様に「待つのもある程度納得納得してもらえる」方法についても考えたいと思います。
これは本記事の頭に紹介しています「ラブロック&ウィルツのサービス・マーケティング」で紹介されている「7. サービスの価値が高いほど、人は長く待つ」をベースにしています。
身近な事例だとおいしいラーメン屋さんに長蛇の列ができたり、テーマパークのアトラクションに数時間待ったりすることがあてはまりますが、待つ価値があると感じられれば待つのもそれほど苦にならなくなります。
病院の価値を高める
- JAHAなどの機関が定める認定病院となり、医療技術が認められていることを打ち出す
- 獣医師や動物看護師が認定資格を取り、権威付けを行う
- スタッフに意欲高く勤務してもらうため、院内制度を整える(教育体制、評価制度)
- 飼い主様への徹底した気遣いを行う(気持ちを汲み取る)
- 診察記録を毎回飼い主様へ手渡しし、飼い主様の不安を解消する
- 病院の掃除を徹底し、匂いがしない環境を整える
ポイント
病院の価値を高める施策は待ち時間がどうであろうと取り組むべきものです。待ち時間対策というより、病院のレベルアップとして随時取り組まれてらっしゃることだと思います。
効果が高く、気軽に導入ができる「WEB待ち状況確認システム」の採用がおススメ
待ち時間対策には色々な対策方法がありますが、各動物病院の運営方針・体制は異なりますからベストな施策も異なります。
私個人的には、WEB待ち受け状況確認システムの採用がおススメです。安価にホームページや病院の待ち受けに待ち時間を表示させることができます。
各病院で費用対効果のあうものから導入を検討されてみてください。